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食後高血糖は糖尿病だけではなく、糖尿病予備群においても重要な指標と注目されています。食事で摂取されたブドウ糖は腸で吸収されて血液中に移行し、インスリンの働きにより肝臓や筋肉などの組織に取り込まれ、エネルギ-として利用されます。したがって、食事をすると一時的に血糖値が上昇します。健康な人の場合、食後2時間もすれば血糖値は140mg/dl未満に低下しますが、血糖値が低下せず、140mg/dl未満に低下せず140mg/dl以上の高値が続く状態を食後高血糖といい、このような食後高血糖は重大な合併症が発症する危険性を上昇させることがわかってきました。また糖尿病を発症した早期の段階には、空腹時血糖値が正常域であっても食後高血糖がみられることがわかっています。(検診でみつかりにくいかくれ糖尿病)食後高血糖が進行すると空腹時の血糖値も上昇し、一日中血糖が高い進行した糖尿病になります。 |
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食後高血糖のメカニズム |
健康な人でも糖尿病予備群でも、食後の血糖値は上昇します。健康な人では血糖値が上昇すると、すい臓から適切なタイミングで適切な量のインスリンが分泌され、その働きによって血糖値は低下し、食後約2時間後には空腹時の値にもどります。一方、糖尿病や、糖尿病予備群の人では、インスリンの分泌量が少なくなったり、分泌する速度が遅かったりすると、血糖値を下げる働きが十分ではないため、食後2時間たっても健康な人のように血糖値は低下せず、高血糖の状態が続いてしまいます。 |
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食後高血糖の重要性 |
糖尿病予備群や糖尿病を発症した早期の人では、空腹時血糖値が正常域(110㎎/dl未満)を示す場合も多くみられます。したがって、糖尿病を空腹時血糖値だけで判定しようとすると、食後高血糖を見逃してしまう恐れがあり、気がつかないうちに糖尿病が発症したり、進行したりするため、注意が必要です。食後高血糖ではインスリンの量や働きが低下して、体の組織でブドウ糖を十分に処理することができず、血糖値を正常に戻す働きが非常に弱い耐糖能障害の状態にあります。さらに耐糖能障害は動脈硬化を促進させることがわかっています。耐糖能障害から動脈硬化へ進展すると、脳梗塞、虚血性心疾患などの大血管障害を起こすリスクが高くなるので、空腹時血糖だけでなく、食後高血糖も併せて管理する必要があります。 |
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血糖値のパタ-ンは? |
糖尿病は、血糖値やHbA1cなど様々検査によって総合的判断されますが空腹時血糖値、ブドウ糖負荷後2時間値の2つの指標から糖尿病型、正常型その中間である境界型とに分類されます。 |
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75gOGTTとはどのような検査ですか? |
75gOGTTは、絶食後にブドウ糖を飲み30分後、1時間後、2時間後血糖値、内因性インスリン(IRI)、尿糖、を測定する検査です。75gOGTTは糖尿病の診断そのものには必須ではありませんがいろいろな情報がえられます。ただし自覚症状などから明らかな高血糖が推測される場合には、まず空腹時血糖または随時血糖を測定すべきです。著しい高血糖状態で75gOGTTを行うと、さらなる高血糖を引き起こして有害です。75gOGTTでわかる糖尿病ハウスのタイプというわかりやすい資料より引用させていただき下記に示しました。 |
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その他75gOGTTではどのようなことがわかるか? |
75gOGTTでは、ブドウ糖摂取前とその後2時間までの血糖値と内因性のインスリンの変動を知ることができるので、その症例の食後血糖値に対するインスリン分泌反応を評価することができます。ブドウ糖液を飲むと、消化管からの吸収によって血糖値は速やかに上昇し30~60分後にピークに達します。以後は糖の利用が進むため血糖値は徐々に低下し、2時間後にはほぼ負荷前値までもどります。(実際は75gOGG施行時はデンプン分解産物のトレランGを使用します。)負荷前IRI値は,食事負荷に影響を受けない夜間の基礎分泌率を反映し、空腹時IRIは5μg/dl前後が正常です。また75gOGTT負荷後は30~60分後にピークを認め、40~50μg/Lまで上昇します。負荷後のインスリン量、分泌パターンの把握は極めて重要です。インスリン指数(insulinogenic
index):負荷後30分の血中のインスリン増加量を血糖値の増加量で除した値です。インスリン追加分泌のうち、初期分泌能の指標となります。糖尿病患者ではこの値が0・4未満となり、境界型でも0・4未満のものは糖尿病への進展率が高いと言われ1時間、2時間後の血糖値と血中もインスリン同時に測定することにより、食後のブドウ糖刺激によるインスリン分泌動態と、これによる糖処理状況を的確に判断することができます。 |
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危険な食後高血糖への注意(Decoda Study) |
糖尿病型と境界型にふくまれる食後高血糖はいずれの病型でも食後血糖値は高値を示しますが、動脈硬化や死亡のリスクについてはアジア人を対象とした調査では75gOGTT負荷後2時間値のみが高値を示した糖尿病型の死亡リスクは正常型の約3・5倍高く、また境界型よりもリスクが高いことが明らかになりました。空腹時血糖がたとえ正常であっても、食後血糖値が明らかに高い人は死亡リスクが上昇することから、食後高血糖は特に注意をする必要ありと考えられています。 |
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食後高血糖と空腹時高血糖の心血管疾患のリスクの相違 |
国内の調査で、同じ境界型であっても、食後高血糖の人(耐糖能障害IGT)と、空腹時血糖値高値の人では、心血管系疾患の発症リスクに差があることがわかってきました。食後高血糖(IGT)や糖尿病の患者さんでは、OGTT2時間値が140mg/dl未満の正常な人に比べて、心血管疾患の死亡リスクが高いことが示されています。一方空腹時血糖値が高い人(IFG)では心血管系疾患による死亡リスクは正常な人(NFG)と同程度ですが、糖尿病の患者さん(DM)はかなり高いことが示されています。この結果から空腹時高血糖よりも食後高血糖の方が心血管系疾患による死亡リスクへの影響が大きいことがわかります。 |
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食後高血糖に潜む危険な病気 |
1)糖尿病性網膜症の発症リスクを高める
2)脳梗塞や心筋梗塞などの発症リスクを高める。
3)頸動脈の血管壁が厚くなり、動脈硬化が進行する。
4)動脈硬化などの原因となる活性酸素の働きを助長、血管の炎症、血管壁の働きが低下する。(内皮細胞の機能低下)
5)癌の発症リスクを高める。
6)高齢者の認知機能に影響を与える |
血糖管理による食後高血糖の治療 |
血糖値は空腹時または食後の一方だけでなく、両方を管理することが重要です。しかし
食後高血糖では何よりも食後血糖値の管理が重要です。最新の日本糖尿病学会のガイドラインでは合併症予防の観点からHbA1cの目標値を7%未満とし、対応する血糖値としては空腹時血糖値としては130mg/dl未満、食後2時間血糖値180mg/dl未満を目安とします。 |
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血糖管理におけるHbA1cと食後血糖値との関系 |
最近の研究では、HbA1cに対する食後血糖値の影響が明らかになっています。HbA1c9.3%以上の場合は食後高血糖への影響は約40%にとどまりますが、HbA1cが7.3%未満の場合は約70%と高い割合を示し、食後高血糖値はHbA1cに大きく影響します。さらに食後高血糖はHbA1cが6.5%を超えるあたりから早く悪化することも報告されています。空腹時血糖値が比較的正常の人でも食後高血糖が異常に上昇する可能性があるのです。又空腹時血糖値の管理目標が達成できても、HbA1cが依然として下がらないことがあります。早期からの食後高血糖の改善は、良好なHbA1cを維持し、糖尿病の発症や進行を抑えて空腹時血糖値の上昇を抑えることにもつながります。 |
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